顧客の情報を送らずに、顧客インタビューや会議の文字起こしにChatGPTまたはClaudeを使うには、その業務依頼に関係するすべてのファイルを1つの案件にまとめ、人、会社、メールアドレス、電話番号をプレースホルダーに置き換え、検出結果を確認してから、安全なコピーを送ります。すべてのファイルでPerson_1はPerson_1のまま保たれるので、AIは誰が何を言ったかを追うことができ、AIの回答に実名を戻す処理はPC上で行われます。

紺色のタブで名前が覆われた印刷済みの文字起こしの横に、ボイスレコーダーとペンが置かれている。

文字起こしが文書より多くの情報を漏らす理由

契約書に名前が出てくる場所は、ある程度予測できます。会話では、名前があちこちに散らばります。人々は互いの名前を口にし、顧客の会社、子会社、競合他社について話し、メールアドレスや電話番号を読み上げ、同僚をあだ名で呼びます。行頭にある話者ラベルも、名前を繰り返しています。

一般的な業務依頼で名前が隠れている場所:

場所例
話者ラベル各発言の冒頭にある「Maria Lopez:」
会話の途中で出てくる名前「経理のTomに聞いて。あの人が承認したから」
会社とプロジェクト顧客、その親会社、競合他社、社内プロジェクト名
読み上げられる連絡先情報「いつものアドレスにm.lopez宛てで送って」
ファイルそのものファイル名、表紙、顧客名入りのヘッダー
関連ファイル作業範囲記述書、フォローアップメール、後から入力したメモ

削除すべき情報の一覧は、 文書をAIに送る前に削除する情報 で一般的なケースを扱っています。この記事では、複数のファイル、1人の顧客、1組の関係者からなる業務依頼について説明します。

まずAIに何を求めるのか決める

ファイルを触る前に、出力として何が欲しいのかを書き出します。10件のインタビューを横断したテーマ、1回の会議の要約、決定事項と担当者の一覧、スライドの構成案などです。AIに何を見せる必要があるかは、求める出力によって決まります。

テーマ分析に必要なのは、それぞれの人が何を言ったかとその役割であり、顧客の最大の取引先の名前ではありません。出力に不要な情報なら、マスキングするだけでなく、安全なコピーから削除してください。送られない内容は漏れません。

文字起こしファイルを使って作業します。会議ツールや文字起こしサービスからTXT、Word、PDF形式で文字起こしをエクスポートできる場合は、それを使ってください。手書きのメモを入力したものも同じように使え、スキャンしたページも処理できます。画像やスキャン内の文字も読み取られます。

業務依頼全体を1つの案件にまとめる

業務依頼用にClientSafeで案件を1つ作り、関係するものをすべて追加します。インタビューの文字起こし、作業範囲記述書、キックオフのメモ、ファイルとして保存したフォローアップメールなどです。ClientSafeは、Word、PDF、プレーンテキスト、Outlookの.msgファイルなどを読み取ります。

案件内では、同じ名前に対して、すべてのファイルで同じプレースホルダーが使われます。安全なコピーにしたときの3つのファイルの例を示します(架空の例です)。

ファイル原文安全なコピー
インタビュー3(TXT)「Maria Lopez:Hartwellのチームは計画を一度も見ていません。」「Person_1:Company_1のチームは計画を一度も見ていません。」
作業範囲記述書(DOCX)「顧客の連絡担当者:Maria Lopez、Hartwell Logistics」「顧客の連絡担当者:Person_1、Company_1」
フォローアップメール(MSG)「Maria、ありがとう。Tom Reyesが次の電話会議に参加します。」「Person_1、ありがとう。Person_2が次の電話会議に参加します。」

各ファイルを個別に処理すると、ある文字起こしのPerson_1は次のファイルでは別の人物かもしれません。その結果、「顧客側のスポンサーは、すべてのインタビューを通じて何を言ったか」という質問に対して、誤った回答や作り上げられた回答が返ってくる可能性があります。 案件全体を使った作業 では、このルールと注意点を説明しています。

メールのスレッドも、同じ案件に含めるファイルの1つです。保存手順については、 AIで顧客メールのスレッドを要約する.

検出結果を確認する

検出は最初の確認であり、最終判断ではありません。検出結果の一覧を開いて確認してください。会話では、契約書にはない次のようなケースが生じます。

  • 話者名。 単独で名だけが使われている場合も含め、話者ラベルをすべて検出したか確認します。
  • 会話の途中で出てくる名前。 文の途中で触れられる同僚が一覧に含まれていること、また、その人のプレースホルダーが案件内の他の場所で使われているものと一致することを確認します。
  • 会社。 顧客、親会社、競合他社、顧客の取引先は、それぞれプレースホルダーが必要です。
  • メールアドレスと電話番号 テキスト内で口にされたもの、または入力されたもの。
  • 誤検出。 個人データではないもののチェックを外します。「Jordan」という製品名、比喩として使われている通りの名前、姓に見えるチーム名などです。
  • 見落とされたテキスト。 検出されなかったものを指定します。あだ名、文字起こしで発生した名前の誤記、顧客の社内コードネームなどです。

名前が見落とされるよくある原因は、文字起こしの誤りです。ある場所では「Lopes」、別の場所では「Lopez」と記録されている場合は、安全なコピーで表記ゆれを検索し、見落とされていれば指定してください。

名前の置き換えでは削除されないもの

安全なコピーで隠せるのは、名前が挙がっている人が誰かということです。情報から誰なのか推測できることまでは防げません。1人だけが持つ役職名、町の名前、業界の人なら誰でも知っているプロジェクト、「ベルリン事務所を閉鎖した年」などの情報を組み合わせると、名前がすべて消えていても個人や会社を特定できる場合があります。

これは仮定の話ではなく、文書で確認されています。Latanya Sweeneyによる1990年米国国勢調査の研究では、 米国人口の87%について、5桁の郵便番号、性別、生年月日の組み合わせが個人ごとに固有である可能性が高いことが分かりました。さらに最近では、Tianshi Liによる2026年のプレプリント研究で、一般公開されている科学者のインタビュー文字起こし125件を調べ、そのうち出版物に言及していた24件を見つけました。そして、ウェブ検索機能を備えた市販のLLMを使って、 そのうち6件を特定の科学論文に結び付けられることを示しました。場合によっては、インタビューを受けた人まで一意に特定できました。著者は$0.5を使い、文字起こし1件あたり約4分で処理したと報告しています。

したがって、名前を置き換えた後、安全なコピーを他人の視点で一度読み、個人を絞り込める情報がないか確認してください。

  • 珍しい役職、特殊な資格、名前が記載された論文、特許、製品。
  • 小さな町、具体的な出来事の日付、チームの規模。
  • 人員削減、発売の失敗、特定の種類の仕入先との紛争など、固有の出来事。

出力に不要な情報は削除するか、一般化します(正確な役職名と都市名の代わりに「地方の物流会社で働く上級エンジニア」とするなど)。1人の話が文書のすべてである人事案件では、この手順は市場調査のインタビュー以上に重要です。こちらを参照してください。 人事におけるAI:最初に削除すべき情報.

安全なコピーを送り、回答を元に戻す

安全なコピーをコピーするか、Markdownの.mdファイルとして保存し、ChatGPT、Claude、Gemini、Copilotに貼り付けるか添付します。プレースホルダーは表記どおりに維持するラベルだと、AIに伝えてください。

These are transcripts of interviews for one client engagement.
Names like Person_1 and Company_1 are placeholders: keep them as written.
Group what the interviewees said into themes. For each theme, list
which Person_N said it, in which interview, with a short quote.
Mark anything that only one person said.

各ポイントの横に話者とインタビューを示すよう求めると、文字起こしと照合して回答を確認できます。要約の際、モデルは複数のインタビューを混ぜ合わせることがあります。引用があれば簡単に確かめられます。

AIの回答をClientSafeの同じ案件に貼り付けると、実名が戻ります。復元されたテキストは顧客の文書です。チャット履歴ではなく、顧客のファイルと一緒に保管してください。 実名の復元 では、復元された回答で確認すべき点を説明しています。

ツールの外で確認すること

安全なコピーを作っても、あなたと顧客が判断すべき3つの点は残ります。

  • 秘密保持契約(NDA)と契約書。 名前を付けているかどうかにかかわらず、第三者との情報共有を制限したり、AIツールの使用に承認を求めたりする契約もあります。条文を読んでください。 ChatGPTに文書を貼り付けるとNDAに違反しますか で詳しく説明しています。
  • 録音が許可されていたかどうか。 米国では連邦法により、会話の録音には少なくとも一方の当事者の同意が必要であり、約11州では全当事者の同意が必要です。これは Reporters Committee for Freedom of the Pressによるものです。他の国にはそれぞれ独自の規則があります。法律で求められる同意なしに録音した場合、文字起こしを匿名化しても問題は解決しません。
  • インタビュー対象者に何を伝えていたか。 調査参加者や従業員に、回答はチーム内にとどめると約束していた場合、または使用するツールを伝えていた場合、AIサービスの利用はその約束にそぐわない可能性があります。倫理審査委員会やクライアントが独自の条件を定めていることもあります。

アカウントの種類によってAIプロバイダーが保持するデータが変わる場合は、その点も確認してください。 ChatGPT、Claude、Geminiのデータ設定。ここに記載した内容は法律上の助言ではありません。特定の案件については、弁護士またはコンプライアンス担当者に相談してください。

よくある質問

AIアカウントが有料の場合でも、匿名化する必要がありますか?

有料プランが関係するのは、プロバイダーがデータをどう扱うかという利用条件です。コンテンツを送信してよいかどうかは、NDAとインタビュー対象者が同意した内容によって決まり、プランによって変わることはありません。安全なコピーでは、そもそもチャットに個人を特定できる情報を含めません。

全員をPerson_Nにしても、AIはインタビューを分析できますか?

はい。テーマ、意見の相違、誰が何を言ったかを分析する際、プレースホルダーによって話者を区別できます。クライアント組織内での役職など、誰であるかが意味に関わる場合は、名前を使わずにプロンプトへ役割を加えてください。「Person_2はCFOです」のように記述できます。

音声や動画の録音はどうすればよいですか?

ClientSafeが扱うのは文書であり、録音ではありません。文字起こしをTXT、DOCX、またはPDFファイルとして使い、録音そのものはAIサービスに送らないでください。

匿名化した文字起こしも、個人データに該当しますか?

該当する場合があります。残っている詳細情報から誰かを特定できる場合や、プレースホルダーと名前を対応させるキーを保管している場合は、安全なコピーにもデータ保護規則が適用される可能性があります。匿名として扱う前に、データ保護担当者に相談してください。

元データは保管しておくべきですか?

はい。案件の保存期間に関する条件に従ったうえで、成果物の作成や自分の記録のために元データが必要です。

ClientSafe 同一案件のファイル内にある氏名、会社名、メールアドレス、電話番号を、PC上で同じプレースホルダーに置き換え、AIの回答では実名に戻します。検出は完全ではないため、コピーする前に一覧を確認してください。