「入力補完」「オートコレクト」「定型文展開」は、いずれも入力中に画面上の文字を変えるソフトウェアを指します。だからこそ混同されるのですが、解いている問題も、動き出すきっかけも、役に立つ入力の種類も違います。この 3 つを実際に分けているものは何か、そして Typeahead のようなツールがどこに位置づけられるのかを見ていきましょう。
オートコレクト:すでに打った文字を直す
オートコレクトは、打ち終えたばかりの単語(または短いフレーズ)を見て、誤りらしければ黙って置き換えます。「teh」が「the」になり、抜けたアポストロフィが補われ、よくあるつづり間違いが修正される、といった具合です。働くのは 打ち終えた後 で、対象はすでに画面にある文字です。これから打とうとしている内容ではなく、打つつもりだった内容を推測しています。
オートコレクトは本質的に受け身です。特定できる誤りが生じてはじめて動き、対象は個々の単語やごく短い決まったパターンに限られます。文の内容そのものは扱いません。
入力補完:この先に来るものを予測する
入力補完は、後ろではなく前を見ます。入力している最中に、いまの単語やフレーズ、文の残りを推測し、その推測を ―― 多くはカーソルの先に薄い「ゴーストテキスト」として ―― 打ち終える前に表示します。提案はキー(多くは Tab または Enter)で確定でき、無視してそのまま打ち続けることもできます。
Typeahead が属するのはこのカテゴリーです。いま書いている文を見て、ありそうな続きを、コンパクトな言語モデルがローカルで生成して提案します。事後的に何かが直されることはありません。提案は Tab キーで受け入れられるか、違う内容を打ち続けた瞬間に差し替わるかのどちらかです。
定型文展開:予測ではなく、打ち込むショートカット
定型文展開はまったく別の仕組みです。ソフトが何かを推測するのではなく、 あなた自身 が短いトリガーを決めます。たとえば ;email や ;sig のような短縮語です。ソフトはそのトリガーがそのまま入力されるのを監視し、設定しておいた本文に置き換えます。予測は一切関与しません。展開が起きるのは自分で明示的に登録したトリガーだけで、毎回まったく同じように動作します。
GagarinSoft 自身の Text Replacements は、まさにこの仕組みに沿って作られた Windows 向けの専用テキスト展開ツールです。決めておいたトリガーを打つと、保存しておいたテキストに置き換わります ―― しかもどのデスクトップアプリでも。メールの署名や住所、一度書いてそのまま使い回したい定型段落のように、確実に同じ出力がほしい場面に向いています。
| ツール | 対象 | 動き出すタイミング | 予測か固定か |
|---|---|---|---|
| オートコレクト | 打ち終えたばかりの単語 | 単語を打ち終えた後 | 誤りらしき箇所を修正 |
| 入力補完(Typeahead) | いま書いている文の残り | 文を書いている途中 | 文脈をもとに予測 |
| 定型文展開(Text Replacements) | 自分で決めたトリガー | そのトリガーを打った瞬間 | 固定 ―― 出力は常に同じ |
この違いが実際に効いてくる理由
確実さと柔軟さ
定型文展開は毎回まったく同じ出力を返します。法務上の定型文や住所など、揺れてはいけないものに最適です。入力補完は文脈に合わせますが、そのぶん実際の言い回しは提案ごとに変わり得ます。
トリガーか、文脈か
展開は特定のショートカットを覚えて打ち込む必要があります。入力補完に覚えるトリガーはありません。ふつうに打っている内容にそのまま反応します。
オートコレクトはあえて守備範囲が狭い
誤字を静かに直すためのもので、気の利いた提案をするためのものではありません。同じくキーストロークを節約してくれるのに、単独で生産性ツールと見なされにくいのはそのためです。
結局どれが必要なのか
署名、免責文、住所のように、まったく同じ文章の塊を何度も打ち直しているなら、それは定型文展開の問題です。Text Replacements のような専用の展開ツールなら、毎回一貫した、寸分違わぬ出力が得られます。一方、打つ内容は変わるものの、返信・説明・依頼のように細部は違えど型は似ている ―― そんな文章が多いなら、入力補完の出番です。すでに打った内容に合わせて提案を調整してくれるからです。オートコレクトについては、どちらの場合でも背後で静かに誤字を直してくれるだけなので、入れておいて損はありません。
Typeahead は入力補完を中核の機能としつつ、言語モデルをダウンロードする前から動くカスタム定型文のオートコレクトと辞書ベースの入力補完も備えています。つまり、文単位の予測に加えて「打ち込むトリガー」の手軽さも、基本的な用途であれば 2 つ目のアプリなしに使えます。
よくある質問
Typeahead はオートコレクトのツールですか、入力補完のツールですか?
Typeahead と Text Replacements のどちらを使うべきですか?
入力補完があればオートコレクトは不要になりますか?
定型文展開にインターネット接続は必要ですか?
入力補完の提案が外れることはありますか?
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