Windows の AI 入力補完は、すでに使っている入力補完と混同されがちですが、両者に関係はありません。今日の Windows が備えているものはすべて「検索」です。ブラウザーは先月その欄に入力した住所を覚えており、Word は文書の前の方に出てきた語句を覚えており、テキスト展開ツールは自分で書いた署名を sig という短縮語から呼び出します。どれも言葉を生み出してはいません。取り出しているだけです。

AI 入力補完は「生成」します。画面上にすでにある語を読み取り、次に来る内容を予測します ―― 誰も打ったことのない文章さえも。それが実際に何を変えるのか、なぜ Windows に標準搭載されていないのか、そしてどうすれば自分で追加できるのかを見ていきましょう。

入力補完が「AI」であるとはどういうことか

いちばん手早い判別法は、これまで一度も打ったことのない文章を入力してみることです。検索型のツールは黙り込みます。照合できる項目がないからです。予測型のツールは書き続けます。一覧を探しているのではなく、この文章を書いている人なら次に何と言うかを、1 語ずつ推定しているからです。

その推定は言語モデルから生まれます。文章がどう展開していくかを吸収できるだけの量のテキストで訓練されたネットワークです。たとえば 「ご指摘ありがとうございます。確認のうえ」 と入力すれば 「本日中にご返信いたします」と提案してきます。あなたのメッセージを一度も見たことがないのにです。この提案は思い出されたものではなく、生成されたものです。

方式 提案の出どころ 新しい文章に対応
フォームの自動入力 以前その欄に入力した文字列そのもの 不可
定型文展開 自分で書き、ショートカットを割り当てた定型文 不可
辞書ベースの予測 単語の出現頻度リストから 1 語ずつ 一部 ―― 単語 1 語のみ
AI 入力補完 いま書いている文脈を読む言語モデル 可能

本当に手に入れているのは「文脈」です

AI の提案が違って感じられる理由は文脈にあります。モデルは直前の 1 語だけでなく、カーソル周辺のひとまとまりの文章を見ています。それだけで文体、時制、主題を読み取れるため、同じ書きかけの一文でも、バグ報告と顧客宛てのメッセージとでは違う形で締めくくられます。

書き進めるほど提案が鋭くなるのも同じ理由です。白紙のメッセージの 1 行目は手がかりがほとんどないため、いちばん予測しづらい部分です。3 文目に入るころには、モデルは話題も口調も語彙もつかんでおり、補完の質が目に見えて上がります。

品質にばらつきがある理由: 補完は事実の検索ではなく、確率の推定です。あいさつ、確認、定型的な返信といった予測しやすい文章はうまく予測されます。日付や決定事項のように、あなたしか知らない情報を含む文章は予測できません。優れた AI 入力補完は定型部分を引き受け、それ以外では邪魔をしません。

なぜ Windows に標準搭載されていないのか

スマートフォンは 10 年以上前から文脈に基づく予測を備えており、そのぶん Windows にないことが手落ちのように見えます。しかしこれは手落ちではなく、構造の問題です。iOS と Android では、あらゆるアプリのあらゆる入力欄が 1 つのシステムキーボードを通してキー入力を処理します。だから予測機能の置き場所は 1 か所で済み、何もしなくてもすべてに行き渡ります。

Windows にはそうした集約点がありません。各アプリケーションが自前のテキストボックスを描画し、入力も自分で処理します。だから実際に使える入力補完は、いつも 1 つのプログラムに後付けされたものになります ―― Word の提案は Word で止まり、Outlook の提案は Outlook で止まり、自動入力はブラウザーで止まります。Microsoft が改良できるキーボード層が存在しないのです。システム全体に効くものは、アプリの内側ではなく横で動く独立したユーティリティであるほかありません。現状をアプリごとに整理したのが次の記事です ―― いま Windows が備えている入力補完.

自分の PC で動かすか、クラウドで動かすか

AI 入力補完はどこかでモデルを動かさなければならず、その答えは 2 つしかありません。クラウド型のツールはカーソル周辺の文章をサーバーへ送り、そこで大きなモデルを動かして補完を返します。オンデバイス型のツールは小さめのモデルをローカルで動かし、接続を一切開きません。

どちらの方向にも実際のコストがあります。クラウドのモデルは大きく、珍しい題材ではより鋭くなり得ます。ローカルのモデルは往復通信なしで答え、飛行機の中でも制限の厳しいネットワークでも動き続け、書いている内容を送信しません ―― 多くの人にとって決め手になるのはこの点です。とりわけ入力補完のように、論文を書き上げるのではなく決まり文句を締めくくるのが仕事の用途では、小型のローカルモデルで十分です。このトレードオフは次の記事で詳しく掘り下げています ―― ローカル LLM とクラウド入力補完入力候補には小さなオンデバイスモデルで十分な理由.

Windows で AI 入力補完を使う方法

Typeahead はプラグインではなくシステムトレイ常駐のユーティリティとして動作します。だからこそ、自前の入力補完を持たないアプリまでカバーできます。入力先のカーソルを追いかけ、ローカルモデルから補完を生成し、グレーのゴーストテキストとして行内に表示します。 Tab キー(既定値。変更可能)を押せば確定、そのまま入力を続ければ無視できます。

モデルは自分の CPU 上で動作

llama.cpp 上で動く Qwen 3 を採用。アカウントも API キーも不要で、モデルをダウンロードしたあとは接続も要りません。

いつも使っているアプリで動作

WhatsApp、Telegram、Slack、Chrome、Edge、Firefox、Outlook、Thunderbird、Word、メモ帳、Notepad++、VS Code のチャット欄とテキスト欄。コードバッファーは既定でオフです。

確定はキー 1 つ

提案はゴーストテキストとして現れ、無視しても手間はかかりません。Tab キーで補完全体を受け入れられます。

PC の外には何も出ません

テキストのテレメトリーもアカウントもありません。パスワード管理ソフトや金融系アプリは既定で除外され、どのアプリも個別にオフにできます。

Microsoft Store からインストールすれば、独自のオートコレクト規則と辞書がすぐに動き出すので、ダウンロードが終わる前から役に立ちます。モデルをダウンロードすると、文章まるごとの予測が有効になります。そのあとまず開くべき設定は 3 つ、確定キー、アプリごとのオン/オフ、そして提案の出やすさです。目新しさが薄れてくると、遅めで控えめな設定のほうがたいてい快適になります。

決める前に他の選択肢と見比べたい方は、Typeahead を各ツールと並べて比較した次の記事をご覧ください ―― Windows 向け文章入力補完アプリ比較.

よくある質問

Windows 11 に AI 入力補完は標準搭載されていますか?
一般に想像される意味では搭載されていません。Windows 11 は一部の入力欄で辞書から次の 1 語を提案でき、Copilot は特定のアプリで依頼に応じて文章を下書きします。しかしどちらも、入力するそばから、どこでも文章を書き上げてくれるわけではありません。
AI 入力補完とオートコレクトはどう違いますか?
オートコレクトは後ろを見て、すでに打ち間違えた語を直します。AI 入力補完は前を見て、まだ打っていない文章を提示します。解く問題が正反対なので、両者は組み合わせてこそ力を発揮します。
AI 入力補完にインターネット接続は必要ですか?
モデルがどこで動くかによります。クラウド型のツールは提案のたびに接続を必要とします。Typeahead はモデルをご自身の PC 上で動かすため、一度ダウンロードすれば完全にオフラインで動作します。
PC が重くなりませんか?
Typeahead はワークステーションではなく一般的なノート PC で動くよう選ばれた、小型の量子化モデルを使います。余裕を持たせたい場合は、より小さなモデルを選ぶ、提案が出るまでの待ち時間を延ばす、特定のアプリでオフにする、といった調整ができます。
英語以外の言語でも使えますか?
はい。基盤となるモデルは多言語対応なので、入力している言語に合わせて提案が変わります。切り替える設定は不要です。
入力内容がモデルの学習に使われることはありますか?
ありません。モデルは出荷時のまま動作し、書いた内容を学習することは一切ありません。テキストのテレメトリーもアカウントもないため、入力した内容が収集されたり送信されたりすることはありません。

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