最適なPDF→Markdown変換ツールは、使い方によって変わります。Python開発者には、MarkItDownやDoclingといった無料のライブラリがあります。GPUで大量に処理するならDocling、Marker、MinerUが向いています。設定不要のWindowsアプリが欲しいならMD Factoryがあります。Pandocは多くの形式をMarkdownに変換できますが、PDFには対応していません。

お断り:MD Factoryは当社の製品です。PDFの変換には、このあと比較するDoclingと、OCRエンジンのTesseractを使っています。ほかのツールに関する情報は、各ツールのREADME、ドキュメント、ライセンスファイルから取り、2026年10月17日に確認しました。

ノートパソコンの前に並べられた、種類の異なる4つの紙の書類の束。
変換ツールごとに、向いている文書と作業スタイルが異なります。

比較表

表は2026年10月時点の各プロジェクト自身のページに基づいています。これらのツールは変化が速いため、決める前にリンク先のページを確認してください。

ツール種類スキャンPDF動作環境ライセンス費用
MarkItDownPythonライブラリとコマンドラインOCRは内蔵せず、LLMプラグインまたはAzureサービスが必要Python 3.10〜3.14MIT無料(Azureの呼び出しは有料)
DoclingPythonライブラリとコマンドラインローカルOCR(エンジンを選択可能)Windows、macOS、Linux。Python 3.10以降MIT(モデルには個別のライセンス)無料
MarkerPythonライブラリとコマンドライン独自モデルによるローカルOCRPython 3.10以降とPyTorch。GPU、CPU、Apple SiliconApache 2.0(モデルの重みは改変版OpenRAIL-Mライセンス)重みのライセンスの範囲内で無料。それを超える場合は商用ライセンス
MinerUPythonライブラリ、コマンドライン、WebインターフェースローカルOCRWindows、macOS、Linux。Python 3.10〜3.14追加条件付きのApache 2.0ライセンスの基準値未満なら無料
Pandocコマンドライン変換ツールPDFは読み込めないWindows、macOS、LinuxGPL 2.0以降無料
オンライン変換ツールWebサイトサービスによるブラウザー各サービスの規約サービスにより無料または有料
MD FactoryWindowsアプリローカルOCRを内蔵Windows 10 22H2、Windows 11(x64)プロプライエタリ7日間の無料試用のあと買い切り

MarkItDown:Microsoftの軽量な変換ツール

MarkItDown は、Microsoftが公開しているオープンソースのPythonライブラリ兼コマンドラインツールです。PDF、Word、PowerPoint、Excel、HTML、EPUB、画像、音声など多くの形式をMarkdownに変換します。Python 3.10〜3.14が必要で、READMEでは仮想環境へのインストールが推奨されています。

pip install "markitdown[all]"
markitdown report.pdf -o report.md

内蔵のPDF変換機能は、PDFのテキストレイヤーを読み取ります。列にそろった単語からMarkdownの表を組み立て、レイアウトモデルやOCRモデルは実行しません。READMEによると、出力はテキスト分析ツール向けで、人が読むための忠実な変換には向かない場合があります。

スキャンしたページには追加機能が必要です。同じリポジトリにあるmarkitdown-ocrプラグインは、スキャンページを1枚ずつ画像化し、OpenAI互換のクライアント経由で画像認識モデルに送ります。Azure Document Intelligenceを使う方法では、PDFがMicrosoftのクラウドサービスに送られ、呼び出しごとに料金がかかります。どちらの場合も、ページは設定したモデルやサービスに送られます。

MarkItDownはMITライセンスで、無料です。

Docling:レイアウトモデルとローカルOCR

Docling は、IBM Researchで始まり、現在はLF AI & Data Foundationがホストしているオープンソースの変換ツールです。PDFの各ページで機械学習モデルを動かしてレイアウト、読み順、表の構造を検出し、Markdown、HTML、JSONとして書き出します。Windows、macOS、LinuxでPython 3.10以降があれば動作します。

pip install docling
docling report.pdf --output markdown --image-export-mode referenced

モデルは初回使用時にダウンロードされます。インターネットに接続できないコンピューター向けに、事前にダウンロードする方法がドキュメントに載っています。OCRはローカルで動き、EasyOCR、RapidOCR、Tesseractなどからエンジンを選べます。GPUは必須ではありません。CPUのほか、NVIDIA CUDA、Apple MPS、Intel XPUのデバイスも使えます。

例の最後のオプションを付けると、画像が個別のPNGファイルとして保存されます。付けない場合、DoclingはMarkdown内に画像をbase64テキストとして埋め込みます。

DoclingのコードはMITライセンスで、READMEでは各モデルのライセンスを個別に確認するよう求めています。標準のPDFパイプラインで使うレイアウトモデルと表モデルは、Apache 2.0とCDLA-Permissive-2.0で公開されています。Doclingは無料です。

DoclingとMarkItDownの違い

どちらも無料のMITライセンスで、pipコマンド1つでインストールできます。ただし、PDFの読み方が異なります。

項目MarkItDownDocling
PDFの読み方テキストレイヤーと列の位置合わせレイアウト、読み順、表構造のモデル
スキャンページLLMプラグインまたはAzureローカルOCR
インストールされるものPyTorchなし、レイアウトモデルやOCRモデルもなしPyTorchと、初回使用時にダウンロードされるモデル
そのほかの入力Officeファイル、HTML、EPUB、画像、音声、ZIPアーカイブ、YouTubeのリンクOfficeファイル、HTML、EPUB、画像、音声、LaTeX、メールなど
選ぶべき場面PDFにテキストレイヤーがあり、軽い依存関係で済ませたいPDFにスキャンや段組みのページ、残したい表が含まれている

迷ったら、手元のPDF 5〜10件で両方を試し、Markdownを元のページと比べてください。

Marker:GPUでの一括処理と、確認すべきモデルライセンス

Marker は、Datalabが開発するオープンソースの変換ツールです。PDFや画像をMarkdown、JSON、HTMLに変換し、追加の依存関係を入れればDOCX、PPTX、XLSX、HTML、EPUBも扱えます。Python 3.10以降とPyTorchが必要で、GPU、CPU、Apple Siliconで動きます。

pip install marker-pdf
marker_single report.pdf
marker pdfs --output_dir markdown
marker_single report.pdf --use_llm

OCRはDatalabのsuryaモデルが担当し、Markerが初回使用時に起動するローカル推論サーバー上で動きます。NVIDIA GPUではDocker上のvLLM、CPUとApple Siliconではllama.cppです。Dockerやllama.cppは自分でインストールします。CPUでは、Markerは既定で高速モードを使い、スキャンページ、文字化けしたテキスト、数式のときだけモデルを呼び出します。

オプションのLLMモード(例の最後のコマンド)は、ページをまたぐ表の結合、インライン数式の整形、フォームの値の抽出のためにコンテンツをLLMに送ります。既定はGeminiで、Claude、OpenAI互換のAPI、Ollama経由のローカルモデルも使えます。選んだサービスのAPIキー、または起動中のOllamaモデルが必要です。

業務でMarkerを使う前にライセンスを確認してください。コードはApache 2.0です。モデルの重みは改変版のAI Pubs Open RAIL-Mライセンスで、個人利用、研究、そして年間売上が500万ドル未満かつ資金調達の総額が500万ドル未満の組織は無料で使えます。それより大きな組織や、勤務先がDatalabと競合する製品を提供している人は、Datalabの商用ライセンスが必要です。条件の全文はこちら: モデルライセンスファイル.

MarkerのREADMEには、1,403件のPDFからなる公開ベンチマークolmocr-benchでDatalab自身が測定した結果も載っています。その測定では、GPU上のMarkerのbalancedモードがDoclingとMinerUより高いスコアを出しています。当社ではこのテストを再現していません。

MinerU:CPUからGPUまでの品質レベル

MinerU は、OpenDataLabチームが開発しています。PDF、画像、OfficeファイルをMarkdownなどの形式に変換します。バージョン4には、すばやいプレビュー向けのflashから、難しい文書向けのadvancedまで、4つの品質レベルがあります。Windows、macOS、LinuxでPython 3.10〜3.14があれば動作し、READMEでは仮想環境にインストールしています。

pip install "mineru>=4.0,<5"
mineru-kit parse report.pdf -o report.md --tier standard
mineru telemetry disable

標準のインストールはCPUで動作します。basicレベルには約0.8GBのモデルと2GBのメモリ、standardとadvancedレベルには約2GBのモデルと8GBのメモリが必要です。ビデオメモリ8GB以上のNVIDIA GPUがあれば、fullオプションでスループットが上がります。OCRはローカルで動きます。

文書がMinerUのオンラインサービスに送られるのは、リモート処理を指定したときだけです。READMEには、MinerUが匿名の利用状況テレメトリーを送る場合があり、そこには文書の内容、ファイル名、パスは含まれないとも書かれています。例の最後のコマンドでテレメトリーを無効にできます。

ライセンスは追加条件付きのApache 2.0です。月間アクティブユーザーが1億人を超える企業、または月間売上が2,000万米ドルを超える企業は別途商用ライセンスが必要で、MinerUを使ったオンラインサービスはMinerUを使っていることを明示しなければなりません。

PandocはPDFを読み込めない

Pandocは数十種類の文書形式を相互に変換できる無料のコマンドラインツールですが、PDFは読み込めません。マニュアルの入力形式にPDFは含まれておらず、公式FAQにもPandocでPDFを変換することはできないと書かれています。PandocがPDFを扱うのは出力のときだけです。出典: Pandocマニュアル, PandocのFAQ.

Pandocが役立つのは、PDFではなく元のファイルがある場合です。DOCX、PPTX、XLSX、EPUB、HTML、ODT、RTFなどを読み込め、Windows、macOS、Linuxにインストールできます。Windowsの場合:

winget install --source winget --exact --id JohnMacFarlane.Pandoc
pandoc report.docx -o report.md

PandocはGPL 2.0以降のライセンスで、無料です。

オンライン変換ツール:設定不要だが、ファイルがPCの外に出る

PDFをMarkdownに変換するWebサイトは、インストール不要でどのブラウザーでも使えます。もともと公開してもよい文書を1つ変換するなら十分です。

その代わり、管理はできなくなります。PDFは別の会社のサーバーに送られ、どれくらい保存されるのか、誰がアクセスできるのか、スキャンにOCRがかかるのかは、そのサービス次第です。契約書、医療や財務の記録、顧客のファイルをアップロードする前に、サービスのプライバシーポリシーを読むか、自分のコンピューターで動くツールを使ってください。

ローカルで変換する方法はこちらのガイドで紹介しています: アップロードせずに文書を変換する.

MD Factory:DoclingとTesseractをWindowsアプリに

MD Factoryは当社の製品なので、その点を踏まえてこのセクションを読んでください。PDF、DOCX、PPTX、XLSX、HTML、TXT、EPUB、CSV、EML、FB2、MOBIファイルをPC上でMarkdownに変換する、Microsoft StoreのWindowsアプリです。

PDFの場合、MD FactoryはDoclingとOCRエンジンのTesseractを実行します。ほかの形式はアプリ独自の変換機能で処理します。Pythonを使いこなせるなら、DoclingとTesseractは無料で、PDF変換の中核を担ってくれます。MD Factoryが加えるのは、その周りのセットアップと作業の流れです。

  • インストールするのはアプリだけです。レイアウトモデル、表モデル、OCRの言語データが同梱されているため、Pythonの設定も後からのダウンロードも要りません。
  • MD FactoryはスキャンPDFをPC上で認識します。文字体系の自動検出か、選んだOCR言語を使います。
  • ファイルや、サブフォルダーを含むフォルダー全体を追加すると、すぐに変換が始まります。
  • 各Markdownファイルは元のファイルの隣に保存され、画像はその隣のフォルダーに入ります。元のファイルは変更されません。
  • 各ファイルは「完了」「要確認」「失敗」のいずれかで終わります。OCRの信頼度が低いページや、テキストを抽出できなかったページがあると、MD Factoryは「要確認」にします。

ライブラリのほうが優れている点は4つあります。

  • MD FactoryにはコマンドラインもAPIもないため、スクリプトやサーバーのパイプラインの中では実行できません。
  • 動作するのはWindows 10 22H2とWindows 11(x64)だけです。ライブラリはmacOSやLinuxでも動きます。
  • 変換はCPUで行い、GPUは使いません。PDFは1件ずつ、ほかの形式は並行して処理します。Docling、Marker、MinerUはNVIDIA GPUを使えます。
  • 7日間の無料試用のあと、MD Factoryは買い切りで購入します。ライブラリは無料です。

どれを選ぶか

Pythonを書くなら、PDFにテキストレイヤーがあり、OfficeファイルやWebページも変換する場合は、まずMarkItDownを試してください。ローカルOCR、表、段組みをまたぐ正しい読み順が必要になったらDoclingに移りましょう。どちらも無料です。

大規模なパイプラインを運用するなら、Docling、Marker、MinerUを検討してください。3つともフォルダー単位で変換でき、NVIDIA GPUを使えます。手元の文書のサンプルで試し、商用で使う場合はMarkerのモデルライセンスとMinerUの基準値を確認してください。

Windowsを使っていて設定をしたくないなら、MD Factoryは7日間の無料試用のあと、スキャンも含めたファイルやフォルダーをコマンドラインなしで変換します。WordやEPUBの元ファイルがあり、コマンドラインに抵抗がなければ、Pandocは無料です。

機密文書なら、ローカルで動くツールを選び、オンライン変換ツールは避けてください。ライブラリでは、データをコンピューターの外に送る設定を確認しましょう。MarkItDownのAzureとLLMの設定、MarkerのLLMモード、MinerUのリモート処理とテレメトリーです。MD FactoryはファイルをPC上で処理します。

どのツールを選んでも、Markdownの数ページを元の文書と比べてください。特に表、段組みのページ、スキャンを確認します。

関連ガイド: RAG用にPDFを準備する, スキャンPDFをMarkdownに変換する.